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切り紙細工の思い出

 アリエスさんのブログを読んでいたら切り紙細工の思い出がよみがえった。

わたしには大好きな大好きな祖母がいた。母の体が弱かったので幼かった頃わたしは祖母の家にしょっちゅう預けれれていた。祖母はとても優しい人だった。着物を着て髪をお団子に結った、そうサザエさんのおふねさんのような姿の人だった。その祖母のことを思い出すと涙が出てくる。

 祖母がいろいろな家事をしているそばで私は終日おとなしく遊んでいたものだ。やはり体の弱かったわたしは走り回ることもあまりなく、絵を描いたりおままごとしたり。。。その中のお気に入りの遊びの一つに切り紙があった。紙を何回か畳んでそれから切り紙をして開いた時の驚きが大好きだった。思いもよらない世界が広がるその不思議さ。。。切る図案(?)もだんだん複雑になっていった。そしてそれを祖母の用意してくれた箱に大切に溜めていった。時々それを出して見るのも好きだった。紙は普通の折り紙もあれば祖母がくれる包装紙を切ったものもあったし、今では見ることもないが薄い質のあまりよくない折り紙のこともあった。ちょっとくすんだ色の折り紙。懐かしいな、あの感触。。。
 そんなある日祖母がお客様と話しているのが聞こえた。
「この子はほんとうに不器用なのだけどはさみだけは上手に使えるのですよ」その声は幾分誇らしげだった。わたしはうれしかった。大好きな祖母がうれしそうにしていることが。。。そしてそれが唯一の私の自信になった。まだ幼稚園にも行っていない頃のことだからずいぶん大昔のことなのだけど鮮明に覚えている。
 
  悪いことをすると祖母はわたしを押入れに入れた。押入れなんて今考えれば自分で開けていくらでも出られるのだけれどわたしは泣いて「ごめんなさい、出して頂戴」と言ったものだ。でもある時わたしは泣きながらその押入れの片隅に置いてあるきれいな包装紙の束を見つけた。なんだかドキドキした。祖母が時々出してくれる宝物のありかを見つけてしまったようで。。。
その後どうしたかは覚えていないのだけれど。。。

祖母の所に泊まることも時々あった。冬の寒い夜祖母の足の間に足を入れて暖めてもらったっけ。子守唄を歌ってくれる祖母が先に眠ってしまうとわたしは祖母をつっつく。そうすると祖母は慌てて続きを歌った。繰り返し繰り返し。
 お話はきまって「だんご、だんご」でも私はそれを飽きずに聞いていた。
祖母の部屋の押入れのそばの物入れには粗末な布が掛かっていたがその向こうには木で彫った熊の置物があってそのごつごつした感触が残っている。ビニールの紐を張った簡易夏枕があってそれをお琴に見立てて弾くまねをしたりした。祖母の家はわたしにとって安心できるそして時間が止まってしまったような世界として記憶に残っている。

 祖父は私の生まれるはるか前に亡くなっていたので祖母は叔父と二人、小さな社宅暮らしだった。でもその社宅の部屋こそわたしにとって今思い出しても心がぽっと温かくなるような場所なのだ。窓には木綿の白いカーテン(もう真っ白ではなく優しい色に色あせていたけれど)が掛かっていた。風にカーテンが膨らみそれを透かして陽の光がクリーム色に輝いていた。穏やかな穏やかな午後。。。音もなく。。。

 祖母はわたしが高校に入った年に亡くなってしまった。あの時後何十年したら天国で会えるのだろうと思ったものだ。早く会いたくてならなかった。あれからずいぶんの歳月が流れ祖母に会える日までのマラソンコースは折り返し地点を過ぎたかもしれない。でも今子供を持ってなるべくその日の遠いことを願っている。わたしは子供を生んだのが遅いからなるべく長生きをしてあげないとかわいそうかななんて思う。
 下の娘が切り紙が大好き。時々やっては大切に箱に溜めている。あの頃のわたしのように。
by mokomokoruka | 2005-03-25 10:08 | 雑感
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